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photo by: 秘密の扉|dTV公式

1762年に起こった悲劇的な米びつ事件(壬午士禍=シニムサファ)で荘献世子(チャンホンセジャ)李愃(イ・ソン)は僅か27歳の短い生涯を閉じることになります。

この記事では、米びつ事件“の後、朝鮮王室で何が起こったのかを追って行きたいと思います。

荘献世子(チャンホンセジャ)、つまり李愃(イ・ソン)の父は朝鮮第21代国王・英祖(ヨンジョ)、母は英祖の最愛の側室であった映嬪李氏です。

ドラマ『秘密の扉』では、主人公の李愃(イ・ソン)にはイ・ジェフン、英祖(ヨンジョ)にはハン・ソッキュが扮し、世子嬪の恵嬪をパク・ウンビンが演じていました。また注目子役のキム・ユジョンが貸本業者の娘ジダム役で登場しています。(※ 詳しくは “『秘密の扉』(韓国ドラマ)の注目キャストと登場人物、相関図“をご参考。)

息子の死を悲しんだ英祖(ヨンジョ)は「世子の事をいつも思い出し、悲しみに暮れてしまう」という意味の 思悼世子(サドセジャ)という名前を与え、生涯にわたって後悔し続けたと伝えられます。

“米びつ事件”(壬午士禍=シニムサファ)の発端と顛末

米びつ事件“の発端は、英祖の健康状態が悪化したため、荘献世子が1749年から代理聴政を行うようになったことでした。

少論派(ソロンパ)に支持された世子を問題視する老論派(ノロンパ)が英祖と世子を仲違いさせようと貞純王后(チョンスンワンフ、英祖の二番目の継妃、老論派)を使って陰謀を画策したため、二人の関係は悪化して行きます。

意外なのは、荘献世子の失脚を執拗に企んだのが身内の存在。世子嬪の恵嬪・洪(ヘビン・ホン)氏の叔父、洪麟漢(ホン・イナン)、英祖の二番目の継妃・貞純王后(チョンスンワンフ)、世子の実の妹、和緩翁主(ファワンオンジュ、映嬪の娘)などだったことです。

一説によれば、実の母・映嬪すら世子の廃位に回ったといいますから、まさに四面楚歌状態だったとも。

英祖は、自分が延礽君(ヨニングン)と呼ばれていた幼い日、少論派(ソロンパ)の横暴に苦しめられた経験から、当時のライバルであった老論派(ノロンパ)とのバランスを上手くとって王権を安定させる蕩平策(タンピョンチェク)を取りますが、この事が少論派に思悼世子を担がせ党争をあおらせる皮肉な結果を生むことになったわけです。

英祖の続投

英祖(ヨンジョ)は、大きな期待をかけていた息子の荘献世子・李愃(イ・ソン)を派閥抗争のせいで失う事になりますが、その後も長く王座に君臨し続けました。

在位期間はおよそ52年間に渡り朝鮮の歴代王としては最も長く、長寿でもありました。(83歳で死去、1694年10月31日~1776年4月22日)

在位中は数々の改革を行い、賢君として今でも人々の間で称賛されています。

例えば、”均役法” の施行。

国民が軍役の代わりに税金として綿布を2疋から1疋に減らすことで民衆の税負担を軽減しながら徴兵を進め、不足する税収を土地税・海税・隠田摘発などで補うなど身分に応じた負担とし、不公平感を無くしました。

英祖は生涯で6人の妻から9人の子女をもうけましたが、息子は2人だけ。7人の妻から14人の子女とも)

それが長男・孝章世子(10歳で夭逝)、42歳の時に、側室(映嬪李氏)との間に生まれた次男のソン(思悼世子)でした。

イ・サン(李祘)が世孫として正式後継者に

イ・サン(李祘)は第22代王の正祖(チョンジョ)のこと。思悼世子 李愃(イ・ソン)の次男で英祖の孫にあたる王子でした。

※長男が夭折したため実質の長男

母は恵慶宮・洪氏(ヘギョングン・ホンシ)。

ちなみに恵慶宮の号を与えられたのは、息子のイ・サン(正祖)が国王に即位した後の事で、それまでは「恵嬪」(ヘビン)と呼ばれていました。

イ・サンは1759年、わずか8歳の時に、”王世孫”(ワンセソン)、つまり正式な国王後継者候補として任じられますが、父親の思悼世子の死の3年前。

思悼世子が世子を廃位されたのが1762年。つまり、父の存命中に国王の後継者候補に任じられたわけです。

このあたりに、英祖と李愃(イ・ソン)の確執の真相を見て取れるようです。

※ 詳しくは、「秘密の扉(韓国ドラマ)で起こる米びつ事件の真相」という記事に描いていますので、ご興味のある方は目を通してみて下さい。

また、正祖が父の仇として骨肉の争いをする英祖の2番めの継妃・貞純王后は義理の祖母にあたります。(貞純王后は老論派の旗頭的存在だった)

ともあれ、イ・サン(李祘)は僅か11歳の子供のときに父親を失う事になりますが、父を死に追いやった老論派への憎しみは募る一方だったようです。

さて、思悼世子が死んだ後、老論派が二つに分裂します。思悼世子の死を正当化する僻派と、思悼世子の立場に同情する時派の二分派です。この“時派”は、イ・サンの側につき、それに少数の老論派、南人派、少論派のメンバーが加わることになります。

正祖の治世

米びつ事件“(辛壬の獄、壬午士禍=シニムサファとも呼ぶ)で父を失った後、王世孫(ワンセソン)イ・サンは輔養庁(ポヤンチョン=王子の教育機関)で帝王学を身につけて行くことになりますが、まずは思悼世子の異母弟で英祖の長男、孝章世子(ヒョジャンセジャ、李緈)の養子となります。

老論派が「罪人(思悼世子)の息子は王になれない」と主張したからでした。

※ちなみに孝章世子は1728年に10歳で夭逝していますので、既に故人。

1775年から王世孫イ・サンは英祖の代理聴政をはじめ、翌1776年に英祖がほ崩御した後、25歳で朝鮮代22代王・正祖(チョンジョ)として即位します。

即位式のとき正祖は「余は思悼世子の息子である」と宣言したと言いますから、老論派にとっては宣戦布告。貞純王后をはじめ戦々恐々の思いを与えたに違いありません。

父の仇、老論派を排斥する為、封建的特権を弱体化して王権を強化するための政治・経済改革を実行する一方、英祖の基本政策であった蕩平策を継承しました。

また、文化の興隆にも努力し、両班から庶民に至る広い層で文化が花開いた時代を作る事になります。

正祖イ・サン(在位1776年~1800年)は、49歳で病死したと伝えられています。(死因は脳卒中とも)

しかし、一方で貞純王后(大妃)ら老論派の陰謀による毒殺だったとまことしやかに語られる事も多いようです。

まとめ

記事を読み進むにつれ、韓国ドラマ『秘密の扉』には以下のキーポイントがある事に気付かれた読者もおられたのではないでしょうか?

  • 朝鮮王朝は常に党争(派閥抗争)に晒されてきた。
  • また、王の外戚争い(王妃・側室を送り込む)も顕著であった。
  • 派閥は王族を旗頭に掲げ、常に権力を握ろうと躍起になっていた。
  • 派閥権力は時には王権さえ左右する事があった。

思悼世子が巻き込まれた”米びつ事件”(壬午士禍=シニムサファ)も例外ではありませんでした。

王室を巻き込んだ血で血を洗う権力闘争は、朝鮮に限った事ではないのですが、数多く発生しています。

例えば朝鮮王朝初期の3代国王・太宗(テジョン、李芳遠=イ・バンウォン)の兄弟や功臣排除による王権奪取(1398年 第一次王子の乱・1400年 第二次王子の乱)。

第7代国王・世祖(セジョ)となった首陽大君(スヤンデグン)が癸酉靖難(ケユジョンナン、1453年)というクーデターで政敵を排除し幼い甥から政権を奪取した事件。

これらはほんの一例で、派閥争いによるクーデターに類したものは枚挙にいとまがありません。

絶大な権力を追い求める党争・派閥争いは常に勝者と悲惨な敗者を生み出し、復讐に次ぐ復讐という悲劇を招くことになったのです。

恐いですネ。

参考:英祖の后妃と子女

ウィキペディアより引用

后妃

  1. 貞聖王后(達城徐氏)
  2. 貞純王后(新安東金氏)
  3. 延祐宮温僖靖嬪
  4. 宣禧宮義烈昭裕映嬪(全義李氏)
  5. 貴人趙氏
  6. 廃淑儀文氏
  7. 宮人趙氏

王子

  1. 長男:孝章世子 李緈(次代王・正祖の養父) – 靖嬪の子
  2. 次男:荘献世子 李愃(次代王・正祖の実父) – 映嬪の子

王女

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  1. 長女: 和憶翁主(靖嬪の娘。夭逝。)
  2. 次女: 和順翁主(靖嬪の娘)
  3. 三女: 和平翁主(映嬪の娘)
  4. 四女: 翁主(映嬪の娘。夭逝。)
  5. 五女: 翁主(映嬪の娘。夭逝。)
  6. 六女: 翁主(映嬪の娘。夭逝。)
  7. 七女: 和協翁主(映嬪の娘。)
  8. 八女: 翁主(貴人趙氏の娘。夭逝。)
  9. 九女: 和緩翁主(映嬪の娘。)
  10. 十女: 和柔翁主(貴人趙氏の娘。)
  11. 十一女: 和寧翁主(廃淑儀文氏の娘。)
  12. 十二女: 和吉翁主(廃淑儀文氏の娘。)

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